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尿失禁は根治的前立腺摘除術後によくみられる愁訴である。前立腺を切除すると、内尿道括約筋(平滑筋)の多くも切除されます。内尿道括約筋(平滑筋)は尿道を圧迫するのに役立ちます。そのため、根治的前立腺摘除術後の尿道圧迫には,横紋筋が重要となります。

以下の3つの筋肉が関与しています。

  • 外尿道括約筋(横紋筋)
  • 球海綿体筋
  • 恥骨直腸筋

これら3つの筋肉の機能は ,経会陰超音波検査を用いて評価しました。

尿失禁の場合は、骨盤底の理学療法がよく行われます。しかし、結果はばらつきがあります。有益な結果を示す研究もあれば、そうでない研究もあります。尿禁制を獲得するために必要な骨盤底機能についての知識があれば、治療戦略の改善に役立つかもしれません。

今日お話しする研究は、すべてこの重要な問題に関するものです。この研究では前立腺摘除術後の尿失禁男性と尿失禁のない男性、また同年齢の対照群を比較検討します。

本研究の目的は以下の通りである:

  • 横紋筋である骨盤底筋群の収縮について、群間に差があるか検討をする。
  • 収縮の振幅について、群間に差があるか検討をする。

Table 1_群

前立腺摘除術後の尿失禁
(PPI)
前立腺摘除術後の非尿失禁 (PPC)対照群(CC)
N=202320
取り込み基準ICS-male SFを用いて
> 4/24点以上
前立腺摘除術後に尿失禁なし
除外基準-手術前の尿失禁
−骨盤内手術
-骨盤への放射線療法
 尿失禁
 前立腺癌
 以前からある下部尿路症状
 骨盤内手術
身長、体重、PPIとPPC群における前立腺摘除術後の経過時間に差はない
超音波探触子を会陰へ矢状面状に設置。尿道、肛門直腸接合部、球部尿道および恥骨結合(ランドマーク)を可視化し、この方法で測定しました。

参加者は半側臥位となり(課題)を実施しました。

Table 2: 課題

1陰茎を短くする最大随意収縮(MVS)-30秒
2陰茎を縮める 10段階中3準最大収縮
3排便時、あるいは放屁するように
10段階中8
4咳 (薬で誘発)
課題中の異なるランドマークの変化を測定した(これがどのように測定され、どのように統計分析が行われたかを正確に知りたい場合は、記事全体をお読みください。)。

結果:

Table 3: 最大随意収縮

課題変位有意差あり有意差なし
最大随意収縮中部尿道/外尿道括約筋(横紋筋)PPC > PPIPPC = CC
球部尿道/
球海綿体筋

PPC > PPIPPC = CC
肛門直腸接合部/恥骨直腸筋PPC > PPI
PPI < CC
下降の観察*
尿道膀胱移行部(下降=恥骨直腸筋の伸長)10/20 PPI (50%)2/23 PPC (9%)

0/20 CC (0%)
準最大収縮中部尿道/外尿道括約筋(横紋筋)PPC > PPI
PPI < CC
PPC = CC
球部尿道/
球海綿体筋
PPC > PPI
PPI < CC
PPC = CC
肛門直腸接合部/恥骨直腸筋PPC > PPI
PPI < CC
PPC = CC
尿道膀胱移行部(下降=恥骨直腸筋の伸長)PPI < CC

下降なし
PPC = PPI
PPC = CC
下降なし
押し下げる中部尿道/外尿道括約筋(横紋筋)All groups
球部尿道/
球海綿体筋
All groups
肛門直腸接合部/恥骨直腸筋All groups
尿道膀胱移行部(下降=恥骨直腸筋の伸長)CC > PPIPPC = CC
誘発性咳嗽
(骨盤底反応収縮=短縮)
中部尿道/外尿道括約筋(横紋筋)PPC > PPI
PPI < CC
PPC = CC
球部尿道/
球海綿体筋
PPC > PPI

PPC > CC
伸長肛門直腸接合部/恥骨直腸筋PPI < CC
PPC < CC
PPC = PPI
球部尿道/
球海綿体筋
PPC < PPI
PPC < CC
PPC=Continent post-prostatectomy, PPI= Incontinent post-prostatectomy, CC= Control group, > = greater than, = = equal, < = smaller than

尿失禁群と非尿失禁群の骨盤底コントロールの違い

外尿道括約筋(横紋筋)の変位が4.1 mm以上、尿道膀胱移行部の変位が2.4 mm以上の場合、受信者操作特性(ROC)は、特異度85%、感度78%を示しました。

前立腺摘除術後の非尿失禁男性の結果

1. 最大収縮時および最大および準最大収縮時に、尿失禁男性よりも筋肉(外尿道括約筋(横紋筋))、球海綿体筋、恥骨直腸筋)を短くすることができます。

2. 健常対照群よりも膀胱頸部の下降を予防できます。

3. 健常対照群よりも球海綿体筋を短くすることができるか。

対照群と比較すると、最大随意収縮時と準最大随意収縮時に有意差は認められません。非尿失禁男性は、少なくとも対照群の男性と同程度に骨盤底筋を活性化できるようです。

*もう一つの興味深い結果は、最大随意収縮時に、尿失禁男性の50%,非尿失禁男性の9%では、恥骨直腸筋の伸長を示したことです。著者らは、これは腹腔内圧の上昇したことが原因ではないかと考えています(未測定)。腹腔内圧は腹筋の収縮によって上昇したり, 恥骨直腸筋がうまく働かないことによって,腹圧を抑えきれないことがあります。

骨盤底の理学療法士にとってどのような意味がありますか?

  • 前立腺摘除術後の非尿失禁性男性は、 外尿道括約筋(横紋筋)1 mmおよび恥骨直腸筋2.4 mmを短縮することが可能です。会陰超音波検査を使用することでこの数値を用いることができます。
  • 我々は、骨盤底筋最大収縮時に腹筋の収縮を確認する必要があります。腹筋が収縮している場合は力を抜くように指導し、正しい骨盤底筋の収縮を指導してください。

 

この研究では、男性が骨盤底筋体操をしたかどうかは記録されていません。そのため、筋機能の改善が、トレーニングプログラムによるものかどうかは不明です。

このブログでは、すべての結果について議論していないので、元の記事の全文を読むことをお勧めします。解剖学と尿禁制との関係など、非常に貴重な情報が満載です。

 

引用文献

Comparison of dynamic features of pelvic floor muscle contraction between men with and without incontinence after prostatectomy and men with no history of prostate cancer. Stafford RE,  Coughlin G, Hodges PW, Neurourol  Urodyn 2019 nov 13. doi: 10.1002/nau.24213. [Epub ahead of print]

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